決定を先延ばししない方法

1.決定を先延ばしする弊害

スケジュールや締め切りが守れない原因のひとつに、「決定が遅い」というのがあります。

あれこれと考えすぎるあまり、ほとんど差のない選択肢の中からひとつを決めるのにいつまでも悩み続けてしまった結果、タスクへの着手そのものが遅くなる。

実際の業務では、まず何をするのか決定しなければ先へ進めないわけですから、「決定する」という行為は「スタートダッシュを切る」という行為と同じです。

これが遅れれば遅れるほど、当然ゴールも遅れていきます。

 

しかしながら、誰しも1度はランチをパッと決められずに悩んだことがあるように、「決定を先延ばしにしたい」という欲求は誰にでもあるものです。

というのも、人は損失を避けようとする傾向が強く、選択肢をなるべく長く、なるべく多く保っていたいと考えるからです。

だけどこれが行き過ぎると、物を捨てられずに家をゴミ屋敷にしてしまうのと同じように、いつまでも選択しないでキープし続けた結果、最後まで何もせずに終わってしまう事態になりかねません。

選択肢を持ち続けた結果、機会損失してしまったら意味がないのです。

ところが、実はその「機会損失」に気が付かないのも、また人間の習性なのです。

 

2.決定を先延ばしする理由

まず選択の際、時間をかけて決めることにはあまり意味がないことがわかっています。

【エリック・デインらの実験】

これは被験者たちに有名ブランドのバッグを10個ずつ見せて、本物か偽物かを当ててもらうという実験です。

Aチームの被験者は、考える時間は5秒間しか与えられない。

Bチームの被験者は、考える時間を30秒間与えられる。

結果は、ブランドバッグを所有している人の場合はAチームの正答率が22%高く、ブランドバッグを所有していない人の場合、Bチームの方がやや正答率が高い程度でした。

驚くべきことに、自分が知っていることの場合、時間をかけて決めると正答率が下がってしまうという結果が出たのです。

一方で、自分が知らないことは時間をかけるとやや正答率が上がるようですが、それでも6倍もの時間を費やした価値が出たのかと言われると、正答率が6倍にならない限りは満足のいく差ではないように感じます。

しかしながらそれでも私たちが選択に時間をかけてしまうのは、選択肢をできるだけ長く多く持っておこうとする「損失回避」の心理がはたらいているからです。

簡単にいうと、「失敗=損をしたくない」という気持ちが強ければ強いほど、私たちは決断を先延ばしにしてしまいます

これはサルにも見られる特徴です。

ある実験で餌を固定しておいて、一方はサルが餌を手に取る前に捕まえようとし、もう一方はサルが餌を手に取ってから捕まえようとします。

その結果、餌を取る前のサルは即座に逃げ出し、捕まりませんでした。

一方で、先に餌を手に取ったサルはなんとか餌を持って逃げようと奮闘するあまり、逃げ出すことができずに捕まってしまいました。

サルは一度手にした餌から手を離しさえすれば簡単に逃げられたのに、結局最後まで手離すことができなかったのです。

これは人間でも同じで、一度手に入れたものを手放すことに関する抵抗感は非常に強いです。

行動経済学者ダニエル・カーネマンらは以下の実験を行いました。

まず、被験者である大学生のうち半数を無作為に選び、大学のロゴマークが入ったマグカップをプレゼントします。

マグカップをもらえなかった学生たちに「マグカップを手に入れるためにいくらなら払っても良いか?」と尋ねると、学生たちは平均2.87ドルと答えました。

一方で、マグカップをもらえた学生たちに「このマグカップはいくらなら売って良いか?」と尋ねると、平均7.12ドルと値付けしました。

同じマグカップにもかかわらず、すでに手に入れているかいないかで、見積価格に3倍以上の差が開いたのです。

 

3.決定を先延ばししない方法

さて、決定を先延ばししてしまう理由は、選択肢をできるだけ長く多く持っておこうとする「損失回避」の心理でした

こうした先延ばしをしないためには、まずは根本的に「失敗=損失=絶対してはいけない、悪いもの」という考えを改めなければなりません。

決定の先延ばしに限らず、失敗を回避しようとする心理がはたらき過ぎると、新しいことに挑戦しなくなったり、積極的に何かを始めることがなくなっていきます。なぜなら失敗しない一番簡単な方法は、何もしないことだからです。

しかし、一生何もしない人生で良いでしょうか?

そう聞かれてYESと答える人は少ないでしょう。

そこで、「失敗=損失」ではなく、失敗=成功のためのサンプル採集と捉える習慣を、意識して身に付けることが重要です。失う事ではなく、得ることに目を向けるのです。

具体的には、何か失敗した時に「失敗したから最悪だ、私はダメな人間だ!」と落ち込むのではなく、意識的に、わざと「今回の失敗の原因は〇〇だということがわかったから、次回以降は同じ失敗をしなくて済む。もっと重大な失敗になる前にわかってよかった。」と考えるようにします。

ここで「意識的に」と言っているのは、失敗を恐れている人がいきなり自然に「失敗してよかった」と考えるのは不可能だからです。

だからこそ、「意識的に」以下のような行動をとることで、「失敗=成功のためのサンプル採集」という概念を身に着けていくことが大切です。

 

①失敗したら何が学べるかを考える

まずは選択する前に、失敗したらどうしよう、ではなく、失敗したら何が学べるかを考えましょう。

通常、失敗しようと思って失敗する人はいませんから、「選択前の自分ではわからなかった失敗の原因を知ることができる」という程度のおおざっぱな捉え方で問題ありません。

 

②失敗した時の感情を受け止め、まずは落ち着く。

実際に失敗したら、最初は「しまった!」と思っても大丈夫です。動揺しても構いません。

自分の感情を押し殺すのではなく、ありのままを受け止めた後、深呼吸をゆっくり2回するなどして、自分の気持ちを落ち着かせます。

 

③失敗で得たものを考える

②の後で落ち着いて、冷静になったら、この失敗から学びを得ようと思いなおすことが重要です。

ここで失敗した自分を責めることは何の意味もありませんのでやめましょう

失敗して放っておいたら失敗=損失でおしまいですが、そこから学びを得れば失敗=成功のためのサンプル採集に変えられます。

勝負はまだ終わっていません!

多少無理矢理にでも気持ちを切り替えて、冷静に失敗の原因を探してください。

 

④失敗の原因を記録する

③ができたら、ノートに失敗したこととその原因、そして考えられる対策を記録しておきましょう。

人は忘れる生き物ですが、失敗をしたショックはひきずってしまうものです。何度も同じ失敗をすると自分を嫌いになってしまいますので、そうなる前に同じ失敗を繰り返さないための対策を打つ=ノートにしっかり記録しましょう

 

⑤次の選択時にノートを見返す

次に選択の機会が訪れたら、ノートを見返して同じ失敗をしようとしていないかチェックしてください。

こうすることで、失敗するにしても過去とは違う失敗を選択できるので、必ず新しい学びが得られます。つまり、目の前の選択を勝ち試合にできるわけです。

そしてこれを繰り返せば、当たり前ですが失敗することそのものがどんどん減っていきます。そうなればますます挑戦する意欲がわき、人生が豊かになっていくことでしょう。

 

このように、もしあなたが何か決断を迫られた時には、選択後の一時的な成果だけが結果なのではなく、その成果をどのように受け止め、次に繋げたかの対応まで含めて結果だということを忘れないでください。

 

 

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